イ-トピア

先日 BS世界のドキュメンタリ-という番組を見ました。(様々な国で製作され内容も様々、時間がある時はいつも視聴している番組です)確か題名は「イートピア」と記憶しています。『ユートピア』ではなかった・・・。

この番組はノルウェーが2019年に製作したものです。

主人公はインドネシアの小さな離島に住む男性。この島の生活は原始的そのもので、男性は褌、女性は腰巻のみで、勿論

電気・水道も無い。沢から流れ落ちる水を竹を繋いだ筒を通して、水道がわりに使用。食べ物は自然界の恵から頂いている。ノルウェーの男性は何かの縁でこの島を訪れ、主人公の男と家族の生活を長年に渡って取材してきました。

二人の名前はややこしい呼び名なので、ここでは主人公は「男」・「彼」ノルウェー人は番組内でも「私」と言ってましたから

以後、そう呼びます。

ある日、私は男を小さな舟で数時間かかる町へ行こう。と誘う。

着いた街は喧噪と雑多に溢れている。

私は男に尋ねた「頭の中が混乱してる?」 男は「いやいや、混乱しているのは、あっちさ!」と走り回る車を指さす。

何度か街へ繰り出すようになった男は、ある日 私にチェ-ンソーを買って欲しいとせがむ。

仕方なく買い与えると男は「これを持っていれば仕事にありつける、ここで生活をしてみよう」と今は亡き妻が残した子供と共に街で生活を始めた。(彼はすでに子供も5人亡くしている)

街中が建設ラッシュの中でチェーンソーを使って材木の解体作業、建築現場で働くようになる。

そして、私は5年ぶりに彼の家を訪れる。粗末な家ながらテレビまである生活。

しかし男はタバコの吸いすぎとストレスから痩せこけた姿で私を出迎える。

気分転換にと私は彼を首都ジャカルタへ招待した。飛行機は勿論、初体験。列車の窓からセメントを作る為に山の岩盤を削っている様子に「山が無くなってしまう!もう二度と山を作る事は出来ない・・」悲しげに訴える。

そびえ立つビル群、人々はフアッショナブル!都市は色彩に溢れかえっている。

大型マ-ケットにある女性の衣服を売る店で彼は、ロングヘアーのかつらを見つけ、短くした髪の上にかぶせてみる。

「ほら、後でまとめると島で生活していた頃の自分みたいだ」嬉しそうに購入した。

ホテルに帰り寝そべりながら、彼は傍らの私に呟いた。「決めたよ」私は「島に帰るんだね!」

それから何年か経って私は島を訪れてみる。静かなジャングルの 大きな1本の木の下で長い髪を後ろに束ね褌一枚の男は穏やかな微笑をたたえながら、満足そうに私と共に草むらに横たわる。

彼と初めて会ってから15年の歳月がながれていた。

視聴感想

溢れる物質と雑事に少々疲れている私は、許されるものなら全てをリセットしてみたいと思ってしまいます。

彼をうらやましく感じる。帰る場所があるのだから。