画家モディリアニと妻のジャンヌそして栗塚氏
手元にあるモディリアニの画集の中に妻のジャンヌが白いフワ-としたドレスを着て少し憂愁を帯びた雰囲気の写真がある。以前からこのようなドレスを作ってみたいと思っていました。
紅花のドレスはそんな感じを思ってつくったものです。
裸婦のクロッキ-をする場所で一目惚れをしたモディリアニは紆余曲折の末、ジャンヌと結婚しました。ご覧のような美しい彼女の姿を数多く描いている。私は中学生の時から彼の芸術を敬愛しています。イタリアの貴族に生まれながらパリに出て孤高のまま貧しく結核で36才の生涯を閉じ、亡くなったその日に二人目を身もごりながらアパ-トから飛び降り主の後を追った彼女。
15年位前に京都の画廊で彼のクロッキ-画数枚が展示されていた際にお値段をきいた所、一枚1千万円と聞いて、嬉しさと切なさが混じった複雑な気分になりました。
「モンパルナスの灯び」という伝記映画の中でカフェで描き終えたばかりのデッサンを数フランで売ろうとしても誰も見向きもせず、「デッサンは要らないわ」とお金だけ渡そうとした婦人に愕然とした彼はカフェのトイレに画をぶら下げ、街に出てそのまま行き倒れになる。切なくて何度観ても涙がでます。ものの値打ちって何か不可解ですね。少なくとも金銭だけでは割りきれないものです。
そして、大変長くなりますが・・・
栗塚氏と先日 お座敷オペラ(知人がバリトン歌手)をお誘いしまして楽しんだ後に、イタリア人のご婦人が二人見えられていたので会終了後、なんと栗塚氏がオ-ソレミオをイタリア語で熱唱されました。それは それは素晴らしいお声で ついには主催者のバリトンとソプラノ歌手との三重奏になりまして大変盛り上がり、会場に残られていたイタリア人と他のお客様に思わぬプレゼントとなりました。
帰途の途中で「本当の芸術は人を感動するもの・・」と感動して思わず言った私に、栗塚氏は「イギリス人は乞食を見るとおまえらは地下にもぐっておけ!」「フランス人は見ないふり?」「イタリア人はおいで おいでと言う」といった感じの事をおっしゃいました。そして「芸術は様々な苦悩の中でこそ昇華するんだ」というような事を話されました・世界中を見聞きされて来た氏はやはりイタリア人的な、お人だと、お会いする回数を重ねる中で痛感致します。
お会いしている時に先のモンパルナスの灯の映画の話が出まして、栗塚氏と主人共々にジャンヌ役を演じたアヌ-ク エメは綺麗だったね。と言われましたが、私は勿論モディリアニ役のジャラ-ル フィリップが良かったです。この映画は1950年代の映画ですが、この作品が作られた時代は1921年にモディリアニが亡くなって30年余りなので、当時の彼を知る人物が存命でした。彼らは口々にジャラ-ルよりモディの方が男前だったと言います。
ちなみに、栗塚 旭氏は1965年放映の新撰組血風録以来、長きに渡り男前俳優の座を不動のものとしておられました。80才の現在でも美麗な御兄様でございます。